あらすじ

シーザー凱旋でローマはお祭り騒ぎとなるが、その裏では彼を亡き者にしようとする暗殺計画が進んでいた。

シーザー死後、ローマの主導権を巡ってマーク・アントニーとブルータス勢力が激突する。

登場人物

・アントニー(シーザーの腹心)

・ブルータス(シーザーの友であったが、彼を裏切り殺害に加担する)

・シーザー(ローマで数々の武功を上げ、王位を切望されるほどの絶対的権力をもつ)

・キャシャス(シーザー殺害計画の首謀者の一人。ブルータスを計画に引き入れようとする)

・オクテイヴィアス(アントニーと共同で、ブルータス一派を一掃するため出陣)

感想

黎明期の映画「猿の惑星」に出演していたチャールトン・ヘストンがアントニー役を務めている作品。

キャシャスのシーザーに対する愚痴がバーッと出てきていてエグい(シーザーどんだけ恨まれてるんだ。仕事が出来過ぎる人への妬みや横暴な上司に対するものなど、現代でもその手の愚痴はあるため、とてもリアルに感じた。不平不満を言っている時のキャシャスの視線がシーザーが群衆に囲まれているところをじっと見つめているシーンなどは特によい。悪口などの陰口も陰険な領域にまで達すると、その人の一挙手一投足を見逃さず、常にターゲットに目を向けているため)。

シーザーに出仕するよう促している、殺害計画に関与している同僚が、彼のプライドを刺激したり、王位をチラつかせるなどして、何としてでも計画の第一歩を達成しようと落ち着かない身振りで唆していたのが素晴らしい演技力だった(落ち着きつつも、次に何を言うか考えながらゆっくり歩き回っていたり、チラチラと探るように相手の様子を伺っているところなど)。

シーザーが妻に「私の顔を見ると誰もが黙る(面と向かって言わない)」といった内容の台詞から、彼の権力の強さが伝わってくる(話を聞けない上司には陰で言うことしかできない。実際のところ、議会で兄の釈放を願い出てきた者がいて、同僚たちも支持していたが、シーザーは譲らなかった。良し悪しは不明だが)。

シーザーが殺害された後、アントニーが現場を訪れるが、殺害実行犯たちがいる間は戦いの意志は見せなかったが、一人になった時にはシーザーの無念を晴らそうという気骨が伝わってきた(自分が嫌いではない人の悪口を振られると、好きではない難しい関係性の人達が相手であれば、共感はしない反面止めることも出来ないが、その人たちがいなくなったら本音を誰かに話したくてしょうがない時と似ている)。

シーザーを殺害した直後にブルータスが演説で、問いを投げかける時にジェスチャーを交えているのが、民衆一人一人の声に耳を傾ける姿勢であるように見えて政治家らしかった。

また同様のシーンでアントニーは、何も知らない民衆を説得するために重心を前に倒して身体を前のめりにしながら演説したところは、己の思想を主張して聴衆を煽りたい思惑が伝わってきた(言い方はオブラートに包んでいたが、彼の「今や天罰が歩き始めた」という台詞や民衆の暴動を招いた結果をみると扇動したと解釈できる)。

アントニーもオクテイヴィアスの帰還を聞いて、笑みを浮かべながら「運が向いてきた」と言っており、欲深い野心家であることが表現されていた(日本でいうと、本能寺の変で信長の死を知った時の秀吉みたい)。

アントニーの「私が民を動かした(扇動した)」という台詞は、部下に自分の力を誇示したい一面が伝わってきた。

キャシャスがブルータスと口論となるシーンで、ブルータスの「兵士の前で口論するのは良くない」は、兵士の士気に影響する(兵士が、命を預けてよいか不安に思う)ことを考慮するもので、その後の行動も兵士の目を気にしたものであることが分かりやすかった。

口論になった時、ブルータスがキャシャスに過去の話(ブルータスが養っている兵士の給料をキャシャスに借りようとして断られたこと)を持ち出したりして、意外に普通の一面を持っていた。

思い切り口論になった後は溜飲が下がり、神妙な様子で会話していたのが自然な流れだった。

ブルータスが妻の死の話をしている時、泣かずに悲しみを表現できているところが、武人らしい生き様となっていた。

戦争シーンはしっかり描かれており、アントニーが寝そべって食べ物を口に含みながら、敵の戦略を適当な口調で分析しているところに勝利者となる余裕を、オクテイヴィアスがアントニーの指示に従わず、自分の主張を通したところからは、戦後の権力争いへの予兆を感じ取ることができた。

キャシャスの軍からも、進軍するときに兵士一人一人が体の力を上手く抜いて姿勢よく真っすぐに進軍していくところから、規律のない寄せ集めではなく、統制が行き届いている戦慣れした軍隊であることが伝わってきた。

キャシャスが早とちりで自決したシーンは、現代でも早とちりで問題行動を取ってしまうことは珍しくないため、(焦っていると特に)説得力があった。

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投稿者

Eiganoyakata

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