あらすじ
1897年のお話。
ルーマニアからイギリスまで、謎の箱を船で運んでいく物語。
その謎の箱の中にはドラキュラが眠っており、目を覚ましたドラキュラは貨物船デメテル号の船員に次々と襲いかかる。
感想
尺が2時間ほどの映画で、1時間を過ぎたあたりから作品の世界観が薄らと出てくるのだが、前半部分でストーリーについて行けずに置いていかれてしまっていると、いまいちよく分からない。
そのため、最初からマジモードで観なくてはならないという、スパルタ体質な映画である(私の場合、時代背景や慣習の予備知識が追いつかず、つまらなく感じた上に、登場人物が多くて顔を覚えることが面倒ー船員が喋ってばかりで、あまり仕事をしないので関係性が掴みづらいーだったため、どうせ後半までにメインキャスト以外はドラキュラに始末されて人物関係もシンプルになるだろうと思い、ぼーっと視聴していたが、分からないなりにも頑張ってよく観ておけばよかった。
冒頭から、どうでもいい会話の中に、サラッと重要な話が盛り込まれているだけでなく、船員たちが中々死んでいかないため、前半部分が理解できていないと後半も厳しい)。
前半部分では船にネズミが出没しているところが、リアルであった。
また、船底で食糧用に豚や羊などの家畜を飼育していたことは新鮮に感じた。
肝心のドラキュラだが、日本人のイメージするドラキュラではないと思う。
一応、前半部分で、城がどうとか、村がなんちゃらといった話が出てきて、何となくドラキュラのモデルとなった「ヴラド3世」を連想させるのであるが、ドラキュラの姿が「ゾンビのようなクリーチャー」だわ、翼があって空は飛べるわ、十字架は効かないわで、もうドラキュラじゃなくていいように思える。
ドラキュラっぽいのは血を吸って、吸われた者をドラキュラにするところと、日の光を浴びると体が焼けるところくらい(「ゾンビのようなクリーチャー」が人の血を吸うから、ドラキュラと呼ばれていただけだったらしい・・・)。
ドラキュラにされた船員が別の船員を一室に追い詰めて、手を引いたのは疑問だったが、その部屋には親玉のドラキュラが先に忍び込んでいて、親分に食糧となるその船員を譲ったと解釈すれば理解できる。
後半以降で世界観が見えてきたのは、ドラキュラが本格的に動き始めてから、ドラキュラ問題について登場人物の台詞や行動が具体性を帯び、人物像が明確になってきたためだと思う。
子供の船員がドラキュラに襲われて死亡したのは意外だったが、それはラストシーンの主人公の決意を強める糧の1つともなったと思う。
ストーリー進行のテンポが速かったため、長尺の割にはストレスフリーで視聴できた。
因みにドラキュラの雰囲気にはあまり恐怖を感じなかった(動きがゲームっぽく、容貌が汚いようでいて、クリアすぎるように感じたため、ドラキュラのスリルを味わいたい人には向かない作品)。
字幕版で視聴したが、吹替版の方が分かりやすかった(ストーリーがあまりに分からな過ぎて2回観た、眠い)。
冒頭で、デメテル号に入った警察官が「船に戻りたくない」と言って怯えていたのは、航海日誌を読んだから。
また、冒頭に港で人を募集している時、医者の手を見て「客は要らねー」の台詞は医者が船乗りの手をしていなかったから。
積み荷(謎の箱)を運んできた依頼主が、デメテル号が出港した時、丘の上から神に祈りを捧げたのは、ドラキュラを運んできたことを知っていたから(最初ドラキュラが出現した時は弱っていたので、退治して封印していたが、港で箱を落とした拍子に封印が解けたということで、封印すべき場所に無事に送り届けたら大金がもらえる契約!と思ったが、そうではなかった)。
デメテル号のコックが「神の名は禁止だ」と言った後のやり取りで、医者が異教徒でないと分かった途端に優しくなったのは、コックが異教徒嫌いだから。
女密航者を医者が助けた時、船長が言った「君の患者だ。食事は君(医者)のを(女密航者に)分けるんだ」という台詞は、食糧が船員人数分程度しかないことを物語っていた。
女密航者の看病を子供の船員に任せた時「誰か入ってきたら俺か船長(子供の船員の祖父)を呼べ」と医者が言ったのは、部屋の外に女の乗船を嫌う船員が居たから。
船員の1人が言った「ネズミが消えた。ネズミのいない船は自然の摂理に反している」という台詞が、これから何かが起こることを予感させる一言だった。
女密航者が目覚めたとき「あいつ(ドラキュラ)が乗ってる!」と言って暴れたのは、ドラキュラから逃げて最後に自由を手にしたかったからだったろうに、不運であった・・・。
船長が、仕事(家畜の世話)を失って落ち込んでいる子供の船員に「由緒正しき望遠鏡」を磨く仕事を与えたシーンは、孫に対する優しさが伝わってきた。
だからその子が亡くなったときに、船長の悲しみが一層伝わってくる。
出港時に人を募集する際、片目がドラキュラで、その目の周辺に焼けた跡がある男がいたが、一度ドラキュラと化したが、除霊的なもので人に戻れたということかな?
だから、ドラキュラの(城の)紋章?を見た時にビビって、箱を落とした??
医者がドラキュラの捜索に乗り出した時、扉を開けて人影(女密航者)にビクッとしたのは、ドラキュラかと思ったから。
ストーリーを観ていて、(人種差別されて誰も雇ってくれない)医者が女密航者を懸命に助けようとしたのは、彼女への愛と医者として人の命を何としても救いたかった(活動したかった)からだと思った。
ラストシーン間近の密航者の女性との別れのシーンには、心を動かされた。
もうこのぐらいにしとこう。