あらすじ
キリスト教徒迫害が慢性化していたローマ帝国であったが、彼らに友の命を助けられたコンスタンチンは、帝国のキリスト教に対する有り様に疑問を抱き始める。
登場人物
・コンスタンチン(戦いで多くの武功を挙げ、皇帝の座に就く)
・ヘイドリアン(コンスタンチンの友人であり、腹心)
・ファウスタ(コンスタンチンの妻)
・ヘレナ(キリシタン。コンスタンチンの母)
・リビア(キリシタン)
・マクセンティウス(ファウスタの兄。皇帝の座を狙う野心家)
感想
ドロドロした血なまぐさいシーンが多いわりには鬼気迫るものに欠けるが、全体としてナチュラルな演技がベース(落ち着いてじっくり話をし、聞いている感じ。演技が丁寧)となっている。
ただ画質が粗く、戦闘シーンはちょっと胡散臭いかも。
コンスタンチンがローマに向かう途中で出会った羊飼い(コンスタンチンを誘い出して奇襲をかける)の敵意を剥き出しにした台詞回しが、抑えも効いていて分かりやすく、見事だった。
コンスタンチンがヘイドリアンの願いを聞き入れ、囚われのリビアを助けたことで追われることとなるのだが、彼の追手に対してマクセンティウスの「コンスタンチンに敬意を払え」という台詞が、普段の会話の内容から暗殺を指示する意味となっていた(これで伝わるところが凄い)。
コンスタンチンに、彼の皇帝就任を祝うために来訪した東方正帝ガレリウスの暗殺を進言して拒否されたマクセンティウスの父が、今度はガレリウスにコンスタンチンの暗殺を持ちかけているところがリアルだった(「Aさんがあなたのことを不満に思って~と言ってたよ」という話を聞いたことがあって、思い当たる節もあったため、謝罪のためAさんに話を聞いたところ、事実は全く違った。私にそういう話を吹き込んだ者は、私が直接Aさんに話をするとは思わなかったらしい。裏でやり取りして本人とは話す度胸がない人からするとまさかの行動だったようだ・・・手口がコスいところが似ている)。
コンスタンチン暗殺が失敗して父を殺害されたマクセンティウスが、その死を利用して皇帝の座を手に入れようとする目的がシンプルで良かった。
正攻法で勝てないと悟ったマクセンティウスが、コンスタンチンの弱みであるヘレナを巻き込むところに、彼がろくな死に方をしない感じを与えていた(ヘレナの探し方も、キリシタンを拷問していて非道であった)。
当時のキリシタンは何をやられても黙って受け入れるところが凄い・・・。
離職率の高いブラック企業で自分より立場の弱い新人などに、いい加減に仕事を教えて、できなければボロクソに悪口や文句を言ったりする性悪にほとんど反発せずに耐えている人柄の良い人を見たことがある。
良識のある人や仕事に意欲的な人はそういう光景や待遇に耐えきれず、すぐに辞めていくから結局人材不足が解消されない。
被害に遭う人はキリシタンというだけで迫害を受ける人たちと同じような気持ちで退職していったんだろうな・・・忍耐強い、そして死(転職)が彼女らにとっての活路であった。
役でいうと「階級」が低く、できることは少ない。
愛するリビアを強姦させて死に追いやった因縁の相手を、ヘイドリアンが殺害したシーンは説得力があった。
最後の戦争前に兵士たちがキリシタンに関する話をしているのだが、中には「キリシタンは(処刑されるとき)ライオンに襲われても耐えているんだ」といった台詞を言っている者もおり、無条件で迫害を受けていたキリシタンの見方に対して、時代がターニングポイントを迎えつつあることを感じた(だからこそ、コンスタンチンがキリスト教を認めると布告したにも拘らず、兵士たちの多くは彼に従った)。
また、母を人質に取られたコンスタンチンが、なぜマクセンティウスに皇帝の座を譲れないのかという理由もしっかり描かれていた。