あらすじ
ソ連との国境を守備する軍に香川大尉が赴任する。
大本営の方針に逆らい、ソ連との戦争を誘発するよう秘密裏に事を進める香川の上官たち、香川の上官と部下たちに対する葛藤が描かれている。
登場人物
・香川大尉(ソ連との国境を守備する軍の長)
・岸中尉(香川大尉の部下、面倒見のいいおっちゃん)
感想
「川があって、船があるっていうのに、どうして歩かなきゃならねーんだ?」の一兵卒の問いかけに対する受け答えに日本軍のソ連に対する煩わしい性質の気遣いがあった。
似たような気遣いとして、愚痴や文句ばかり言うから、いつもある程度気にしてあげないといけない、面倒くさい人いる。
以前の職場に、上司のいない時間帯に毎回(プライベートの話題含め)3時間くらい喋っているトラブルメーカーのアルバイトがいたが、内容を聞いていると普通の話をしているのは実質10分程度で、あとは全部愚痴などのネガティブトークだった(職場の雰囲気悪くなるから、辞めちまえ)。
何気ない会話に思いやりや、愛などが含まれていた。
兵士たちの方言がキツすぎたり、発声や活舌が微妙で何を言っているのか分からないシーンが大分あったが、様々な地域から集められた当時のことを考えると、そうだったんだろうなと思えた・・・でも字幕つけてほしい(後世の人間からすると、専門用語や地域名もピンとこない)。
香川が着任して部下たちに気が緩んでいると言っていたが、彼に手紙を出して、からかったことを他の女に話しているところから、部下たちの性根が腐っていることに納得がいった。
香川が着任して猛特訓が行われてから、彼が部下たちを呼んで放った「俺のことをとんでもない~(←方言が聞き取れない)な奴が来たと思うとるんだろう」は、香川が部下たちから不平不満を言われていることを自覚していることの表れであった(ちょこっとだけ、そのシーンがあった)。
全体的に間が良かった(ああいうシーンを見ると、良い間というのは皆で作り出すものであることがよく分かる。メインキャストは演技に落ち着きがあって、静止した状態での表現が上手い)。
台詞が半分くらい聞き取りづらかったこともあってか(台詞の字幕や地域の説明つけろ)、何を描きたいのかあまりよく分からなかったが、脚本が黒澤明さんだったので、あまり押しつけがましくなく、「ご想像にお任せします」というスタンスだったのかな?
戦争のドキュメンタリー映画のようだった。
上官たちが軍令を違反したことを隠すために兵士や住民たちを皆殺しにしたラストシーンなんかは、いかにもありそう(現代でも、自分を守るために嘘をつくなどして他人を陥れる人はいる)。
軍人のぶっきらぼうな演技や真面目な役についていける女優陣の演技が素晴らしい。