あらすじ
足が不自由なサミュエルを大きな館に閉じ込めて、厳しい英才教育を施す奥様の元に、昔の恩人が現れ、デニーズを託して亡くなった。
デニースに心惹かれるサミュエルは、母に反抗していく。
登場人物
・サミュエル(足が不自由、奥様の息子)
・奥様(館の主、サミュエルの母親)
・デニーズ(15歳、新人メイド)
・フィリップ(雑用係兼用心棒)
感想
秀逸な作品、色々とあって書ききれない。
最初は謎、謎、謎の連続だったが、30分を過ぎたあたりからは徐々にほぐれてきた。
奥様の言動が、息子への愛を感じさせながらも厳格であったので、常に緊迫感があった。
また、奥様がサミュエルに対して過保護すぎて、厳しすぎることが腑に落ちなかったのだが、ラストシーンで館の外の様子を観ることができて、ようやく全てを理解した。
ラストを観るまでは、館の者が外に出ようとしない理由は、(館の住人が「奥様に救われた」と感謝していることから)一般社会で非情で理不尽な目にあった人達が集まっているためだと思っていた。
ラストシーンに物語の全てが集約されている感じ、サミュエルとデニーズを助けた責任をとって、奥様に忠実な医師を殺して自殺したフィリップの行動も頷ける(普段は隠していたが、医師と同様、奥様への愛もあったように見えた)。
フィリップが医師に言った「何でも奥様の指示でやった(デニーズの頭に跡が残るほどの電流を流した、伏線として門番にも同様のことをやっており、スッと入ってきた)と思えば、罪の意識も軽くなる」といった内容の台詞はなるほどと思った。
物語中、聖書の「エデンの園」の話が出てきたのは、楽園が館でアダムとイブが、それぞれサミュエルと奥様、禁断の果実がデニーズ、ヘビがデニーズを連れてきた老人(昔の恩人)という暗示?
外の世界が分かると、猪を殺す時に、奥様がサミュエルに、なぜ執拗に「頭を狙いなさい」と言ったのかが分かる。
また、病気になった館の住人が頭をぶち壊されて殺害される理由も、外の世界の住人に関係しているのかもしれないと思った。
そして、館の敷地内で収穫して食料を調達している理由や、脱出しようとする者が皆、地図をもって「ある場所」を目指している理由も納得がいった。
奥様は最後、野生動物とかに食われたのかな・・・一生懸命やってきただけ(特にフィリップには、そのことが十分すぎるほど分かっていたから、奥様を裏切ったときに泣いた)だったので、ちょっとかわいそう。
立派で広大な敷地を持つ邸の門番が何故、アンポンタンだったかも、他に人材を探せなかったからだと分かる。
最後のシーンで、フィリップに助けられたサミュエルとデニーズが車に乗っている途中で、運転しているデニーズが急に車を止めたのだが、「(サミュエルに)車から降りて」と言うのかと思ってヒヤッとした(サミュエルを利用するだけ利用してポイ捨てかと思った)。
サミュエルとデニーズは幸せになれたのかどうかが分からない。
館の中は、オチが分かるまでは離職率の高いブラック企業みたいな感じ、人が次々と居なくなります
→従業員「すみません、来月いっぱいで辞めさせて頂きます」
管理者「分かった(また辞められたかー)」みたいな。